セリフの溜まり場
忘れられない愛の契り
「お帰りなさい、あなた。今日もお疲れ様です。はい、あなたの好きな日本酒『獺祭(だっさい)』よ」
「ん、気が利くじゃないか。ありがとう」
「それに、今夜はつまみも用意したのよ」
「本当にどうしたんだこんなに張り切って。カンパチとアジの刺身に、冷奴に、豚の角煮、イカの塩辛、みんな俺の好きなものばかりじゃないか」
「....ねえ、あなた今日は何の日か覚えているでしょう?」
「今日は....うーん......」
「.....もしかして覚えていないの?(むすっ)」
「すまない、喉元まで出かかっているんだが、もう少し待ってくれ.....」
「ふぅん.....。本当かしらね.....?(怪しむ)」
「.......ごめんなさい......」
「そんなことじゃないかと思っていたわ。ふふ、あなたはいつも私を養うために日々忙しいものね。
30年前の今日は、私たちの結婚記念日よ。思い出したかしら」
「あぁ、もちろんだ。あの日は季節外れの大雨だったな」
「えぇ。それでもたくさんの人が来てくれてみんなが私たちの門出を祝ってくれたわ。あの時の感動は今でも思い出せるわ」
「そうだな。あの時はお前も俺も大学生だった。お前が20、俺が22だったからな」
「出会いは、サークル同士の合コンだったわね。私が法学部のテニスサークル、あなたが史学部のバスケットボールサークル。この時の部長同士が仲が良くて、共同で合コンを開くことになったのよね」
「その時に出席したメンバーの大多数がそのまま結婚したのは驚いたよな。今でも連絡を取り合う仲だし、この間も共に新潟の地酒を飲みに行ったりするくらいだものな。会社の同僚にきくと、そんなに長く付き合いが続いているのはないといって驚いていた」
「そうね。私もパートの方にぽろりとそんな話をしたけれど、驚かれてしまったわ」
「こんなに長く、しかも大きな喧嘩もなく円満な結婚生活を送ってこられたのも、お前のおかげだ。ありがとう」
「いえいえ、あなたが支えてくれなかったら、か弱い私はすぐに倒れて動けなくなってしまうわ。こちらこそ、毎日ありがとうございます。あなた」
「ふふ、当たり前だろう。あぁ、そうだ。お前に渡したいものがあるんだ」
「え?渡したいもの?」
「......目を瞑ってくれないか」
「えぇ......」
「いいか.....?」
「ふぇっ.....きゃっ......なによ、柄にもない。後ろから抱きしめるなんて...。......でもあったかい......何年ぶりかしらね、こんなことされるの......」
「.....いやな気分にはならないだろう?」
「えぇ、もちろん。だってこんなに私のことを愛してくれるんですもの。ますます好きになってしまうわ」
「.....これからも一緒にいてくれるか」
「私でよければ、ね...。あなたこそ、これからもいてくれるかしら」
「俺でよければ、な.....」
「ふふ、それで、そこまでやって渡したかったものってこれ.....?」
「いや、見てみろよ」
「え?あっ.......これ、ネックレス......」
「この堅い契り(ちぎり)を、ここに永遠に結ぶことを誓います...なんてね.....」
「ふふ、ばかね....ほんとにばか......」
「誰よりも大切にするよ、だから俺についてこい」
「はい、愛しの旦那さま」