セリフの溜まり場
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「ふう、今日もおしまいっと......。
あなた、今日も一日無事に終わりました。さあ、乾杯しましょう......?
(間)
はい、あなた。今日は日本酒ですよ......(にっこり)。ふふ、もちろん、特上のお酒です。あなたの好きな『久保田』の大吟醸です。今日の為に奮発したのですから......(にっこり)。なんでこんなものを用意するのか、ですって?ふふ、当たり前じゃないですか。今日はあなたと出会って10年の節目の日ですよ?これくらい用意するのが妻として当然の役目です。
それよりこれ、どうです?あなたに初めて教えていただいた「たこめし」です。うまくできたでしょう?お客さんにお出ししても美味しいと評判なのですよ。ご飯もほろほろとほぐれて、噛みしめる度にタコのうまみと醤油の香ばしい香りとが合わさってとても美味しいと。
ふふ、よかった....。あなたも喜んでくれて...。お客様もそうですけれど、なによりあなたに喜んでもらえるのが一番嬉しいのです。ありがとうございます、ふふ。
でも、これだけではないのですよ。はい、あなたの好きな茶碗蒸し。どうです?おいしいでしょう?あなたの好物であり、得意料理でしたものね。......あ、気づかれましたか?そうです。この中には、ぷりぷりのえびが入っているのです。あなた直伝の、ぷるぷるふわふわのたまごに包まれて、ほどよい弾力のえびが顔を出す。まるで、夫婦の結晶ですね。...なんて、自分で言っていて恥ずかしいです....(恥ずかしそうに、はにかみながら)。
......なんて、やけに大きなテーブルをいくら埋めて(うずめて)みても、鼻を高くして自慢をしてみても、あなたは戻ってこない。それはわかっているのですけれど......。
(間)
(酔いが回る。今までとは一転し、涙声で)
......あなた、どうして置いて、逝ってしまったの.....。この身は底の見えない無間(むげん)地獄に突き落とされたようです。あぁ、愛しいあなた。あなたは私に、ひとりで生きていけとおっしゃるのですか。
今日みたいな、雨降りの夜は、ことにあなたの優しく包み込むぬくもりが恋しいのです。あぁ、憎いあなた。私を置いて逝ってしまうなんて。憎い憎い憎い.....(嗚咽混じりに)。
あぁ、愛しいあなた。あなたのその腕で熱く抱いて。俺がいるから大丈夫だと熱い吐息と共に囁いて。そして、私を荒々しくめちゃくちゃにして......!!!あぁ、あなた......!!!!!(感極まって号泣、フェードアウト)」